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満月の日は風が強い?

差は見られない

海や山の現場で長く語られてきた説です。今回のデータでは、満月の日に風が強くなる様子はまだ見えていません。

東京

日最大風速(平均)
20.4 km/h
満月の日 (±24時間)
20.6 km/h
新月の日 (±24時間)
20.2 km/h
満月の日の判定
差は見られない

ロンドン

日最大風速(平均)
20.5 km/h
満月の日 (±24時間)
20.6 km/h
新月の日 (±24時間)
20.7 km/h
満月の日の判定
差は見られない

ニューヨーク

日最大風速(平均)
17.8 km/h
満月の日 (±24時間)
17.7 km/h
新月の日 (±24時間)
17.6 km/h
満月の日の判定
差は見られない

対象データ: 1940年〜2025年・ERA5再解析(Copernicus C3S)

第2幕: 風の強さを大きく動かしていたもの

今回のデータで、はっきり見えた差はこちらです。

×1.3

東京では、風が最も強い月(4月)の平均風速は、最も穏やかな月(11月)の約1.3倍です。風の強さを大きく左右していたのは、季節でした。

観測期間中の最大瞬間風速は 159 km/h(2019年10月12日)。嵐を連れてきたのは、低気圧と台風でした。

少なくとも今回のデータでは、季節と低気圧のほうが、ずっと大きく風を左右していました。風の予定は、まずは天気予報で。

「月が風を呼ぶ」という言い伝え

「満月の前後は時化る」「月夜は凪ぐ」——海と山の現場には、風と月をめぐる言い伝えが両方の向きで残っています。漁師や船乗りが月齢を頼りに海へ出てきた歴史は長く、潮(これは本当に月が動かしています)と風がひとつの「海の機嫌」として語られてきたのは自然なことです。

ただし潮と風では、月の関与の大きさがまるで違います。潮汐は月の引力が直接駆動する現象ですが、風を駆動するのは気圧の差——つまり太陽による大気の加熱ムラです。本ページは、3都市・80年以上の風の記録で「満月の日は風が強い(弱い)か」を確かめます。

この判定はどう計算しているか

  • データはERA5(欧州中期予報センターの再解析データ、1940年〜)の日最大風速(地上10m)を、東京・ロンドン・ニューヨークの3都市分使用しています。場所を変えても結論が変わらないかを見るためです
  • 雨ページと違い、風速は「ゼロの日が大半」という歪んだ分布ではないため、割合ではなく平均をそのまま比較できます
  • 風には強い季節性があります(東京の春の強風、ロンドンの冬の嵐)。そこで「同じ月」の平均風速を期待値とし、実測÷期待の指数で比較します
  • 各都市の正午時点の月齢で「満月の日(瞬間±24時間)」「新月の日」を判定し、各グループの指数の平均を平常(1.00)と比較します

詳しい判定基準は方法論をご覧ください。

月は大気を「ほんの少しだけ」引っ張っている

月の引力は海だけでなく大気にも働き、「大気潮汐」と呼ばれるごく小さな気圧の波を作ります。月起源の成分は地上気圧にしてわずか数十パスカル——天気図の等圧線1本(数百パスカル)よりずっと小さく、雨のページで紹介した約1%の降水変調と同じく、長期統計でようやく見えるかどうかという水準です。

つまり「月が大気に触れている」こと自体は本物の物理です。今のところ、出航や洗濯物の判断に効くほどの差は見えていません。それでも、月が空気を動かしていること自体は確かです。

まだ見えていないこと

今回の結果は「月は関係ない」という意味ではありません。今の調べ方では、次のようなことが見えていません。

  • 海の上の風:言い伝えは海の現場の話ですが、今のデータは都市の地上の風です
  • 潮の変わり目の風:漁師が感じてきたのは、潮が動く時刻の風かもしれません。日最大風速では、その時刻の動きは見えません

次に調べたいこと

  • 沿岸や海上の風のデータで確かめる
  • 1時間ごとの風速を、潮の満ち引きの時刻と合わせて見る

海で働いてきた人たちの感覚には、まだ数字にできていない何かがあるのかもしれません。いつか、それをデータで見つけ出したいと思っています。

データ出典

  • ERA5再解析 — Copernicus Climate Change Service (C3S) の情報を使用(CC BY 4.0)。履歴データは Open-Meteo 経由で取得
  • 月齢・朔望の瞬間は Jean Meeus "Astronomical Algorithms" のアルゴリズムによる自前計算(UTC基準)

最終更新: 2026年10月7日 00:48 (UTC)(毎日自動更新)