満月の日は気温が高い?
差は見られない
「満月の夜は冷え込む」「満月は暖かい」——農家や登山者の間で両方の言い伝えがあります。実は『満月の日はごくわずかに暖かい』とした研究も実在する、侮れないテーマです。
東京
- 平均(全期間)
- 14.4°C
- 満月の日 (±24時間)
- 月平均−0.06°C
- 新月の日 (±24時間)
- 月平均−0.03°C
- 満月の日の判定
- 差は見られない
ベルリン
- 平均(全期間)
- 9.3°C
- 満月の日 (±24時間)
- 月平均−0.08°C
- 新月の日 (±24時間)
- 月平均−0.08°C
- 満月の日の判定
- 差は見られない
ロサンゼルス
- 平均(全期間)
- 17.6°C
- 満月の日 (±24時間)
- 月平均+0.05°C
- 新月の日 (±24時間)
- 月平均+0.07°C
- 満月の日の判定
- 差は見られない
対象データ: 1940年〜2025年・ERA5再解析(日平均気温)
第2幕: 気温を大きく動かしていたもの
今回のデータで、はっきり見えた差はこちらです。
+22.9°C
東京の最暖月(8月)と最寒月(1月)の差は22.9°C。研究で報告されてきた満月の影響(±0.1°C級)の数百倍を、季節が毎年あたりまえに動かしています。
さらに、観測期間の最初の10年と直近10年を比べると平均で+1.7°C(日平均の最高記録は2025年8月6日の33.0°C)。この変化の要因として挙げられているのは、舗装とビルが溜め込む都市の熱、増え続ける温室効果ガス、海洋の数十年周期の揺らぎです。数十年かけて一方向に進むこの変化は、29.5日でめぐる月のリズムでは説明しにくいものです。
少なくとも今回のデータでは、季節と気圧配置のほうが、ずっと大きく気温を動かしていました。研究で報告されている「ごくわずかな満月の暖かさ」が見えるかは、これからも確かめ続けます。
「満月の夜は冷える」も「満月は暖かい」も、両方ある
満月と気温の言い伝えは、面白いことに正反対の2つが共存しています。農家や登山者の間では「満月の夜は雲がなく、放射冷却で冷え込む」。一方で「満月の晩は霜が降りない」という地方の言い伝えもあります。屋外で夜を過ごす人たちが体で覚えてきた感覚を、机上の理屈で笑うことはできません。だからこそ、本ページは実感と同じ土俵——数十年の実測気温——で確かめます。
実は「満月はわずかに暖かい」とした研究がある
このテーマは完全なオカルトではありません。1995年、Balling & Cerveny は衛星観測から「満月の頃は地球全体の下層大気がごくわずかに(100分の2度ほど)暖かい」と報告しました。月の引力による大気潮汐や、満月の反射光・赤外放射が候補に挙げられています。ポイントはその大きさです——0.02°C。普通の温度計では測れず、人が体で感じるのは難しい量です。「効果がゼロかどうか」ではなく「生活に意味のある大きさか」が、このページの問いです。
この判定はどう計算しているか
- 気温はERA5再解析(Copernicus C3S)の日平均気温です。東京・ベルリン・ロサンゼルスの3都市・3大陸で、場所の偶然に依存しない形にしています(1940年〜)
- 気温は0°Cをまたぐため、他のトピックで使う比率(平常=1.00)が使えません。そこで「同じ月の平均」からの偏差(°C)で比較します
- 「満月の日(瞬間±24時間、各都市の正午の月齢で判定)」「新月の日」それぞれの偏差の平均を95%信頼区間つきで評価し、±0.3°C未満は「ほぼ関係なし」、±1.0°C超で「高い/低い」と表示します
- 月別平均には温暖化トレンドが混ざりますが、満月の日は全期間に一様に分布するため、満月/新月の比較では打ち消されます
詳しい判定基準は方法論をご覧ください。
「満月の夜は晴れて冷える」説はどうなのか
冒頭の放射冷却説を確かめるには、順序に気をつける必要があります。満月だから晴れるのか、晴れているから満月が見えるのか。曇りの夜の満月は見えないので、記憶に残るのは晴れて冷え込んだ満月の夜になりがちです。日平均気温ではこの違いを分けられないため、晴れた夜の冷え込みだけを取り出して確かめる必要があります。なお雨のトピックでは、今のところ満月の日に降水が変わる様子は見えていません。
まだ見えていないこと
今回の結果は「月は関係ない」という意味ではありません。今の調べ方では、次のようなことが見えていません。
- 夜の冷え込み:言い伝えは「満月の夜」の話です。日平均気温では、夜の冷え込みが昼の気温と混ざって薄まります
- 晴れた夜だけ:放射冷却が起きるのは晴れた夜です。曇りの夜も含めて数えると、その違いは見えにくくなります
- ごく小さな差:研究で報告された0.02°Cは、3都市の日々の揺れの中では見分けるのが難しい大きさです
次に調べたいこと
- 日最低気温(夜明け前の冷え込み)で確かめる
- 雲量のデータで、晴れた夜だけを取り出して比べる
夜を外で過ごしてきた人たちの感覚には、まだ数字にできていない何かがあるのかもしれません。いつか、それをデータで見つけ出したいと思っています。
データ出典
- ERA5再解析 — Copernicus Climate Change Service (C3S) の情報を使用(CC BY 4.0)。履歴データは Open-Meteo 経由で取得
- Balling RC, Cerveny RS. "Influence of lunar phase on daily global temperatures" Science 1995;267:1481-1483
- 月齢・朔望の瞬間は Jean Meeus "Astronomical Algorithms" のアルゴリズムによる自前計算(UTC基準)
最終更新: 2026年10月7日 00:48 (UTC)(毎日自動更新)