満月の日は暗いニュースが多い?
差は見られない
「満月の日は物騒だ」——報道の現場や夜勤明けの実感として、よく聞く説です。世界のニュースの「トーン」を機械的に測ったデータで確かめます。
日本関連のニュース(GDELT)
- 平均(全期間)
- ネガティブ報道 14.4%
- 満月の日 (±24時間)
- ネガティブ報道 14.1%
- 新月の日 (±24時間)
- ネガティブ報道 14.6%
- 満月の日の判定
- 差は見られない
- 対象データ
- 1979年〜2025年・8,584,215 件のイベント
米国関連のニュース(GDELT)
- 平均(全期間)
- ネガティブ報道 13.5%
- 満月の日 (±24時間)
- ネガティブ報道 13.5%
- 新月の日 (±24時間)
- ネガティブ報道 13.5%
- 満月の日の判定
- 差は見られない
- 対象データ
- 1979年〜2025年・258,052,403 件のイベント
第2幕: ニュースの暗さを大きく動かしていたもの
今回のデータで、はっきり見えた差はこちらです。
×5.8
観測期間で最もニュースが暗かったのは2012年12月3日——ネガティブ報道が58.1%、平常の約5.8倍に達しました。紙面を大きく暗くしていたのは、現実の大事件です。
曜日による差もごくわずかで、最も暗い火曜日でさえ最も明るい金曜日の約1.05倍にとどまります。ニュースの暗さをはっきり左右していたのは、その日に何が起きたかでした。
少なくとも今回のデータでは、その日の出来事のほうが、ずっと大きくニュースの暗さを動かしていました。月との関わりは、まだ探している途中です。
「満月の日は物騒だ」という実感
「満月の夜はろくなニュースがない」——報道の現場、警察署の当直室、夜勤明けの休憩室で、世界中で語られてきた実感です。lunar lunacy(月の狂気)という言葉が示すとおり、満月と世の中の荒れを結びつける感覚は古代から続いています。毎晩ニュースと向き合う人の実感を、机上の理屈で笑うことはできません。だからこそ、本ページは実感と同じ土俵——実際の報道記録——で確かめます。
理屈の上でも、筋書きは作れます。満月の夜は犯罪や事故が増え、それが翌日の紙面を暗くするのかもしれない。睡眠が浅くなった記者や読者が、暗い話題を選ぶのかもしれない。問いは「筋書きが作れるか」ではなく、「数十年・数億件の報道データに、その痕跡が実際に残っているか」です。
「ニュースの暗さ」をどう測るのか
GDELT(Global Database of Events, Language, and Tone)は、世界中の報道を機械的に読み取り、出来事ごとに「トーン」——記事の言葉づかいがどれだけネガティブ/ポジティブか——を数値化している公開データベースです。1979年から現在まで、毎日数十万件の規模で蓄積されています。
本ページでは、日本関連・米国関連のそれぞれについて、「その年のトーン分布の中で特に暗い側の2割」に入る出来事の比率を日ごとに計算し、「その日のニュースの暗さ」としています。報道の総量もトーンの物差しも年代で大きく変わるため(GDELTの旧アーカイブはトーンのスケール自体が現行と異なります)、固定の閾値ではなく年ごとの相対値で、件数ではなく比率で比べます。
この判定はどう計算しているか
- GDELT 1.0 events から、出来事の発生地が日本/米国のものを日次集計しています(1979年〜)
- 指標は「ネガティブな出来事の比率」(同じ年のトーン分布で下位2割に入る件数 ÷ 全件数)。報道量の増減やトーンの物差しの変化に影響されません
- ニュースには強い曜日リズム(週末の紙面は構成が違う)と、収集量・論調の長期変化があります。そこで「同じ曜日×同じ年」の平均を期待値とし、実測÷期待の指数で比較します
- 各国の正午時点(日本=JST、米国=東部時間)の月齢で「満月の日(瞬間±24時間)」「新月の日」を判定し、各グループの指数の平均を平常(1.00)と比較します
詳しい判定基準は方法論をご覧ください。
注意書き:このデータが測っていないもの
GDELTのトーンは「報道の言葉づかい」の計測であって、世の中で起きた不幸の総量そのものではありません。また、満月の日には満月そのものの記事(お祭り、スーパームーン)が増えることがWikipedia閲覧のトピックで確認されており、これはどちらかといえば明るい話題です。つまりこの指標は、満月効果をわずかに「明るい」方向へ引っ張る可能性すらあります。
まだ見えていないこと
今回の結果は「月は関係ない」という意味ではありません。今の調べ方では、次のようなことが見えていません。
- 夜のニュース:言い伝えは「満月の夜」の話です。今のデータは1日単位なので、夜の数時間だけの動きは見えません
- 出来事の重さ:トーンは言葉づかいの計測で、出来事そのものの重さとは同じではありません
- ほかの国:今は日本と米国だけを見ています
次に調べたいこと
- 事件・事故・抗議など、出来事の種類ごとに分けて見る
- 日米以外の国でも、同じ方法で確かめる
「満月の夜はろくなニュースがない」という実感には、まだ数字にできていない何かがあるのかもしれません。いつか、それをデータで見つけ出したいと思っています。
データ出典
- GDELT Project(GDELT 1.0 Event Database, 1979年〜)
- トーンの定義: GDELTの平均トーン。「ネガティブ」は同じ年のトーン分布の下位20%として集計(新旧アーカイブのスケール差を吸収するため)
- 月齢・朔望の瞬間は Jean Meeus "Astronomical Algorithms" のアルゴリズムによる自前計算(UTC基準)
最終更新: 2026年10月7日 00:48 (UTC)(毎日自動更新)