満月の夜は火事が増える?
差は見られない
本ページは消防が対応した火災件数の記録です。ぼやから大火まで規模はさまざまです。
東京(東京消防庁の管轄)
- 平均(全期間)
- 12.9 件/日
- 満月の日 (±24時間)
- 13.1 件/日
- 新月の日 (±24時間)
- 13.2 件/日
- 満月の日の判定
- 差は見られない
- 対象データ
- 1989〜1990年と2019〜2024年・37,730 件
年ごとの火災件数(1日あたり)
| 年 | 平均 | 満月の日 | 新月の日 |
|---|---|---|---|
| 2024 | 12.3 | 10.7 | 12.6 |
| 2023 | 11.9 | 12.7 | 11.9 |
| 2022 | 10.8 | 10.5 | 10.3 |
| 2021 | 10.8 | 10.9 | 10.8 |
| 2020 | 10.1 | 10.9 | 10.3 |
| 2019 | 11.2 | 11.3 | 11.9 |
| 1990 | 18.3 | 20.4 | 18.3 |
| 1989 | 17.9 | 17.4 | 19.8 |
平成3年〜30年は、日別の表がオープンデータに無いため含みません。1日あたりの火災は30年で約38%減りました。満月の日が平均より多かった年は5年、少なかった年は3年です。1年の満月の日は約25日と少ないため年ごとの上下は偶然の範囲で、すべての年をまとめると平常と同じでした。
月ごとの火災件数(1日あたり)
| 月 | 平均 | 平常=100 |
|---|---|---|
| 1月 | 15.7 | 121 |
| 2月 | 15.2 | 120 |
| 3月 | 14.7 | 112 |
| 4月 | 13.3 | 103 |
| 5月 | 12.2 | 95 |
| 6月 | 10.9 | 85 |
| 7月 | 11.2 | 86 |
| 8月 | 10.9 | 85 |
| 9月 | 10.3 | 80 |
| 10月 | 11.0 | 86 |
| 11月 | 13.3 | 104 |
| 12月 | 16.2 | 125 |
平常=100は、各年の1日平均を100とした値です。空気が乾く冬に多く、夏から秋は少なめになります。
火災が最も多かった10日と月の形
| 日付 | 件数 | 月の形 |
|---|---|---|
| 1990/11/12月曜日 | 61平常の3.3倍 | 有明月ごろ月齢 24.5 |
| 2019/4/13土曜日 | 36平常の3.2倍 | 上弦ごろ月齢 7.8 |
| 2023/12/28木曜日 | 35平常の3.0倍 | 満月ごろ月齢 15.1 |
| 1990/1/8月曜日 | 49平常の2.7倍 | 十三夜ごろ月齢 11.0 |
| 2023/2/28火曜日 | 31平常の2.6倍 | 上弦ごろ月齢 7.8 |
| 2022/3/15火曜日 | 28平常の2.6倍 | 十三夜ごろ月齢 12.4 |
| 2021/1/21木曜日 | 27平常の2.5倍 | 上弦ごろ月齢 7.9 |
| 2019/1/29火曜日 | 27平常の2.4倍 | 下弦ごろ月齢 23.1 |
| 2021/12/27月曜日 | 26平常の2.4倍 | 下弦ごろ月齢 22.8 |
| 2020/12/21月曜日 | 23平常の2.3倍 | 上弦ごろ月齢 6.4 |
倍率は、その年の1日平均に対する比です。10日のうち、満月の前後1日に当たる日は0日、新月の前後1日は0日でした。
出典:東京消防庁「東京消防庁統計書」(東京都オープンデータカタログ)のデータを加工して作成
ロンドン(2018年〜)
- 平均(全期間)
- 48.1 件/日
- 満月の日 (±24時間)
- 47.3 件/日
- 新月の日 (±24時間)
- 49.0 件/日
- 満月の日の判定
- 差は見られない
- 対象データ
- 2018年〜2023年・105,323 件
サンフランシスコ(2003年〜)
- 平均(全期間)
- 11.3 件/日
- 満月の日 (±24時間)
- 11.3 件/日
- 新月の日 (±24時間)
- 11.6 件/日
- 満月の日の判定
- 差は見られない
- 対象データ
- 2003年〜2025年・95,212 件
第2幕: 火事の数を大きく動かしていたもの
今回のデータで、はっきり見えた差はこちらです。
×3.3
東京で最も火災が多かったのは1990年11月12日——61件、その年の平常の約3.3倍でした。
季節の差ははっきりしています。最も多い12月は、最も少ない9月の約1.6倍。火災をはっきり増やしていたのは、空気が乾く冬でした。
少なくとも今回のデータでは、空気の乾燥とその日の出来事のほうが、ずっと大きく火事の数を動かしていました。月との関わりは、まだ探している途中です。
「満月の夜は火事が増える」という言い伝え
満月と火災を結びつける言説は、世界各地の消防・救急の現場に根づいています。「満月の夜は出動が多い」という体感は、犯罪や救急の言い伝えと同じ家系のもので、月が人を落ち着かなくさせ、不注意やトラブルを増やす——という発想につながっています。月明かりの夜は外で火を扱う活動が増える、という素朴な理屈もあります。では実際、満月の日に火災は増えているのでしょうか。本ページは東京・ロンドン・サンフランシスコの3都市の消防データで確かめます。
この判定はどう計算しているか
- データは3都市の消防オープンデータの火災のみの日次件数です。東京(東京消防庁の管轄、1989〜1990年と2019年〜)、サンフランシスコ(2003年〜・米消防、NFIRSコード1xx)、ロンドン(2018年〜・ロンドン消防庁、Incident Group = Fire)。火災以外(誤報・救助等)は除外しています
- 東京は「東京消防庁統計書」の「月、日別火災件数」の表を使っています。統計書は1冊が1年分で、日別の表がオープンデータ(CSV)で公開されているのは平成元年・2年と令和元年以降だけのため、その8年分です。各月の日別の合計が表の「計」と一致することを確かめてから取り込んでいます(平成元年・2年の表は8月の行の見出しが「9」と誤記されているため、行の順番で月を読んでいます)
- 火災件数には曜日や季節(冬の暖房、夏の乾燥)のパターンがあります。そこで「同じ曜日×同じ月」の平均を期待値とし、実測÷期待の指数で比較します(事故・犯罪と同じ調整方式)
- 各市の正午時点の月齢で「満月の日(瞬間±24時間)」「新月の日」を判定し、各グループの指数の平均を平常(1.00)と比較します
詳しい判定基準は方法論をご覧ください。
データを読むときの注意
- 件数は「消防が対応した火災」であり、ぼやから大火まで規模はさまざまです。発生のすべてが記録されるわけではありません
- 本ページが見ているのは「カレンダー上の満月の日に、火災件数が目に見えて多いか」という一点です。現場の「満月の夜は忙しい」という実感は、件数とは別の形で表れているのかもしれません
まだ見えていないこと
今回の結果は「月は関係ない」という意味ではありません。今の調べ方では、次のようなことが見えていません。
- 時間帯:言い伝えは「満月の夜」の話です。今のデータは1日単位なので、夜の数時間だけ増えるような動きは見えません
- 火災の種類:屋外のたき火や放火など、言い伝えの理屈に近い種類だけが増えていても、ほかの火災に混ざると見えにくくなります
- 火災以外の出動:救急や救助など、「忙しい夜」を作っている出動は今回の件数に入っていません
次に調べたいこと
- 発生時刻のわかるデータで、夜の時間帯だけを取り出して比べる
- 火災の種類(建物・屋外・放火など)ごとに分けて見る
- 救急出動の件数でも、同じ方法で確かめる
消防の現場で語られてきた「満月の夜は忙しい」には、まだ数字にできていない何かがあるのかもしれません。いつか、それをデータで見つけ出したいと思っています。
データ出典
- 東京消防庁統計書(東京都オープンデータカタログ)(第22表「月、日別火災件数」、CC BY 4.0)。出典:東京消防庁(データを加工して作成)
- DataSF — Fire Incidents(サンフランシスコ市消防、NFIRS火災のみ)
- London Datastore — London Fire Brigade Incident Records(UK Open Government Licence、Incident Group = Fire のみ)
- 月齢・朔望の瞬間は Jean Meeus "Astronomical Algorithms" のアルゴリズムによる自前計算(UTC基準)
最終更新: 2026年10月7日 00:48 (UTC)(毎日自動更新)